独裁心中

せとらえとの子宮。掃溜の思考と考察、ホラーショートショートを綴る。

【小説】子消し

 

人はーーーー

かさぶたが出来るとめくる。

無駄毛が生えると剃る。

苛々すると爪を噛む。

髪が伸びると切る。

蚊に刺されると爪で十文字を作る。

一重が嫌だと二重にする。

暇だと愛液と精液をカクテルする。

 

少女はーーー

手首があるから切り刻む。

流れた血を製氷機に流し込む。

凍った赤い飴玉を舐めながら眠る。

 

私はーーー

おかっぱだからこけしになる。

左足を出刃庖丁で根こそぎ、ぎちゃぎちゃゴトンと切り落とす。

右足はジャンビーヤを使い、家畜をさばく勢いで眼球を飛び出させ根元から切り落とす。

左腕はパン切り包丁で優雅にバイオリンを奏でるように、私しか知らない歌を歌ってギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコギコしていたら上腕骨頭からゴトリと落ちた。


あとは右腕を。右腕。右腕。


あああああああああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああああああああああああ
ああああああああああああああああ

 

だれがあだじのみぎうでおどじでよ
ごげじにならなぎゃいげないの
ごげじごげじごげじごげじ


私はレンガを咥えて何度も何度も右腕に叩きつけた。
けれど潰れるだけで、達磨でもこけしでもない。
カタワの中のカタワ。
五体超絶不満足。

 

こけし

江戸時代末期の土産物。

球型の頭部と円柱の胴体の人形玩具。

性具として用いられる張型の暗喩。

 


どなたか私を壊れた張型として飼って頂けないでしょうか?

今ならオプションで、潰れた右手できっと摩訶不思議な性感高めて差し上げましょう。

 

【小説】保冷剤


保冷剤が溶けきってグニャグニャで機能しなくなって用無しで能無しで死んだ感覚が凄く愛おしく感じる。


あゝ、アレルギーが。アレルギーがまだオサマラナイ。

これで保冷剤いくつめかしら。
もう数えるのもそろそろ飽きてきたわ。

アタシはアレルギー持ちで、アレルギーが出ると患部を保冷剤で冷やすといいと人伝てに聞いて、それからアレルギーが出ると保冷剤で患部を冷やすようになった。


ただ、アレルギーは思いの外しつこくて、保冷剤一つが溶け切る頃にはおさまっていなくて、予備の保冷剤でまた患部を冷やし出すの。それを気が遠くなるほど繰り返す。


毎晩ベッドに入るとアレルギーが出るの。


アタシの冷凍庫には保冷剤がいくつもストックしてあって、
保冷剤しか入ってなくて、、
保冷剤がギッシリビッチリそれはそれは規則正しく整列してあって、、、

 

朝。


また保冷剤と共に朝を迎えてしまった。
アレルギーはいつものようにおさまっていた。


アタシはいつものように着替えて鏡向いてお化粧をして、、真っ赤なルージュを引いてペロッと唇を舐めて魅せて完璧。
今日のアタシもとっても綺麗。

 


アタシのアレルギー気になる?

 


あのね、アタシはとっても大好きなのに、アタシの事をとっても大嫌いな人がいてね、泣いても縋ってもどうしてもキスしてくれないから、その人の舌切り落としちゃった。

そしてそれをアタシの舌に縫い合わせたの。
24時間365日永遠に濃厚にしつこいくらいキスできるように。

そしたら貴女、よっぽどアタシの事が嫌いだったのね。毎晩ごねるの。嫌だ嫌だってアレルギー起こすの。
そんなとこも可愛くてアタシは大好きなんだけどね。

その人の本体?そんなの知らないわ。
アタシはただ彼女とキスがしたかっただけなの。

 

 

【小説】clearance

 

人を殺したい。

あゝ、人を殺したい。

俺はただそれだけなのだ。

ただこの世は難しくも単純でつまらない規則に縛られていて、俺はそれによってそれを実行することが生まれつきできないのだ。
生まれつき普通の人間なのだ。


右にならえ、前を向け、下を向くな、頑張れ、負けるな、ありがとう、ごめんなさい、そうやって生きてきた。


なんて。


なんて。

 

俺、可哀想。

 


そんなことを考えながら毎日健常者と偽善者という仮面を被りながら生きる日々。


午後6時55分。
ある日、帰り道になんとなく近所の公園に立ち寄り、寂れたベンチに座りやや猫背気味でため息を吐く。


にゃあー


一匹、、いや何匹だろうか、きっと餌をやっている人がいるのだろう。
結構な数の野良猫たちが木陰に身をひそめじゃれあったり、与えられた餌を食べたり、眠ったりしている。


俺と同じで孤独だな。
可哀想に。
でも可愛いな。とても。あどけなくて愛らしい。うちで飼いたいぐらいだ。そしてなにより、なんて、


美 味 そ う な ん だ ?

 

俺は思わず両手で口を塞いだ。
いけない。
と同時に悪魔が囁いた。

アレは人間じゃないぞ。人殺しにはならない。しかもあんなに沢山いるんだ。一匹くらい連れて帰ってもバレないさ。
見てて孤独で可哀想なんだろう?なら助けてやれよ。そしたらお前は救世主だ。正義のヒーローだ。飼いたいんだろう?解体んだろう?食べたいんだろう?猫ってどんな味か確かめてみたくない?バラした時、どんな声で鳴くか、骨肉がどんな悲鳴を奏でるか聴いてみたくない?


午後7時過ぎ。
俺はコンビニの弁当の袋に手頃な子猫を詰めた。


かチャッ。
帰宅。
袋をぶちまける。
ドスっ。
鈍い音。

生憎俺は一人暮らしで自炊もめったにしない。調理器具は新生活をはじめて買ったきり、埃がかぶったままだ。

料理、料理ってなんだ?


包丁の握り方も切り方もよくわからないし、肉の部位は焼肉へ行くから故の牛か豚ぐらいしかわからない。
魚の三枚下ろしなんてものもできないので猫の三枚下ろしも不可能なのは明白で。

とりあえず切り分けてみることにした。

首。ぎちぎちぎちぎちぐりゅぐりゅぶしゅあぐにゃぐゅゴトン。
子猫なので案外数秒で終わった。
というか案外鳴き声という鳴き声がなかった。

次、足4本。ゴトン、ゴトン、ゴトン、ゴトン。あまりにも軽快。ゴトンゴトンいいすぎて電車に揺られている気分だ。

あとは胴体を食べやすい大きさに切り分けたいところだが内臓やら骨やらがあってややこしい。


とりあえず骨は食えそうにないなと思った、というのも魚の骨は食べない主義だし、チキンの骨も食べないからだ。

だからまずは縦に割いて、肋骨らしきものを取り除き、腰椎や骨盤等を捨てた。
まあ細かいものは口に入れたときに魚の小骨を口から出す感覚でいいだろう。


とりあえず料理法が思いつかないので鍋に子猫の頭、足、尻尾、内臓、胴体をぶち込み水を張り、冷蔵庫にあったいつのものか分からない赤味噌で20分程煮込んでおいた。


20分後蓋をあける。
今まで嗅いだことのない異臭がした。と、同時になんとも芳しくも香ばしく、懐かしい母の味噌汁の安心する匂いがした。


味。内臓は煮込んでどこがどこかもうわからないが食べてみる。
赤味噌がいい具合に臭みを消している。グニグ二感がくせになり後引くおいしさ。どこの部位かわからないのが残念だ。部位によってはコリコリしたりズルズルしたりトロケタリ、様々で苦くて食べ辛い部分もあったりもした。
足は正直俺は豚足派だったが嫌いではなかった。
尻尾は尾椎があるのでむしゃぶるように食べた。

顔が一番食べづらかった。
なにせ骨が多い。
ただ、目は絶品だ。国宝だ。目だけに目が覚めた。
あとで目のどこが美味しかったのか知りたくてインターネットで調べたぐらいだ。
しかし、硝子体が美味しかったのか、腹側直筋が美味しかったのか、角膜が美味しかったのか、眼瞼筋が美味しかったのかわからなかった。だがもうそんなことはどうでもいい。
ただ明日もあの公園に行こう。


それから毎日あの公園に日が暮れると通い、猫を一匹ビニール袋にぶち込んで連れて帰った。

日に日に俺の料理の腕も上がり、最近ではマリネにしたりチーズフォンデュにしたり、小腸をうどんに見立てて猫肉うどんにしたり、猫耳グラタンなんて可愛いモノを作ったりできるようになった。

ただ、一つ不安がある。

公園から猫の数が減ってきたのだ。

そして俺の今の体は猫しか受け付けなくなってきている。

猫と一緒でなければ普通の食材が喉を通らない。

 

 

 

そして猫がいなくなった。

 

 

もう猫以外受け付けなくなった舌、胃袋。


日に日に痩せ細る身体。


なにも受け付けない。


何も飲めない。食べれない。


普通の食材を無理矢理飲み食いするとおぞましい嘔吐に襲われる。


猫の体液や血液が愛おしい。

猫の肉や内臓が愛おしい。


涙が頬を伝う。

 

、、、、、涙?

 


そうだ。俺の身体は猫で出来ている。
それならばこの涙も猫の一部かもしれない。

俺は涙を舐めてみた。

しょっぱい。

不思議と吐き気がしなかった。

涙がどんどん溢れた。

俺は。

止まらなかった。


俺の腕をかじり静脈も動脈も歯ですり潰し筋繊維も食いちぎり奥歯で噛み締めもう止まらないおいしいおいしい猫の味がする猫だ猫だ俺は猫なんだにゃあー。
口の届くところはただただ生き絶えるまで俺を食べ尽くしたにゃー。


顔と心臓、膝下、性器だけが部屋に残されていた。

 

 

 

 

 

 

【小説】むしゃぶる睡魔

 

午前零時。今日も1日が終わる。

あいつがクル。

あとは眠るだけなのに。
明日の仕事に備えて眠るだけなのに。
眠るのが怖い怖いコワイ。


「やあ。」

「また、、!また来たのか!?一体何日目だと思ってるんだ?!何日俺はお前のせいで寝てないと思ってるんだ?!いい加減にしてくれ!!」

「まあそんなこと言いなさんな。
そもそも寝たけりゃ勝手に寝ればいいじゃないか。見なさい。この部屋には誰もいない。お前は毎日一体誰と話しているんだろうねえ。」

「う、うるさい、、もうお願いだから来ないでくれ、、昼間の仕事にも支障をきたしているし、本当に頭がおかしくなりそうなんだ、、一日中イライラするし胃の辺りは気持ち悪いし目眩も頭痛もする。そのうち仕事もクビになって死んじまうんじゃないかって不安で不安で、、、

ピピピピピピピピピピピピピピピピッッ

 

午前六時。目覚ましの音だ。
支度をして仕事に行かなければ。
身体が重い、、、
あいつは目覚ましが鳴ると消えてしまう。

フラフラになりながら出社する。

コピー機を見ていると、羽根が生えてきて、ペガサスになって今にも飛び出しそうだ、、


パソコンの文字が何重にも見えてハエになって蠢きだした。頭の周りをブーンブーンと飛び回る、、

派遣社員がシュレッダーをかけている。
下から出てくるズタズタになった紙をぼんやり眺めていると真っ赤に切り刻まれた人の肉が、、

「うわあああああああ!!」

「どうした。」

「いえ、なんでもありません。」

「ここ一ヶ月程君の仕事ぶりを見ているといつもぼんやりしているかと思うと突然叫び出したり見ていて不安定になるよ。それにミスしかしてないじゃないか。体調管理も仕事のうちだ。態度を改めてもらわんと。君の代わりはいくらでもいる。」

「すみません。」

 

毎日仕事はこんな調子だ。

全く仕事にならない。
食事もなにを食べても味がしない。

とにかく、ただ、ただ眠りたい。眠りたいのだ。そう、俺は眠りたいだけなのだ。
そうだ、あいつさえいなければ。あいつさえ来なければ。来させなければいいのだ!!!


俺のどこにこんな力が残っていたのだろう。
全速力で風よりも速く走ってアパートに帰った。


鞄を放り出し、家具をひっくり返し、徹底的にどこから声がするか調べだした。
だが、なにもわからなかった。


そうこうするうちに午前零時。あいつが来た。

「おやおや。随分暴れたようだねえ。荒れてるねえ。」

「うるさい、、お前さえいなければ、、俺がお前になにをしたって言うんだよ!消えろよ!消えてくれよ!お前一体誰なんだよ!」

「私はお前に住み憑いておるもんでな。消せないんじゃよ。だから諦めるこった。お前が死ぬまで相手をしておくれ。あははぁ、、」

「ざけんなよ、、俺も頭がついにおかしくなっちまったか、、でも俺は眠いんだ。とても眠い。とてもとてもとても。だが、お前がいると眠れない。だから眠らせてもらうよ。
あばよ、死神野郎。」


俺はまぶたをホチキスでバチバチと留めた。これでまず視界は真っ暗良好。
使い古したしなびた、けれどあたたかい布団に寝転がり、喉をズブリと引き裂き、そこから舌をズルゥッ!っと引きずり出した。
こうして俺は暖かい血液の染みた毛布をむしゃぶり、包まれ、安らかな眠りを手に入れた。永遠に。

 

ーーーーー


「おやおや、眠ってしまったようだねえ。
ちょっと私もいじわるだったかねえ。
言葉のあやってやつなんだが。
お前に住み憑いてるじゃなくて、お前の上の部屋に住み着いてるってとこなんじゃが、、」

真っさらな201号室。

認知症の老婆がポツリと呟いた。

 

 

 

【小説】咀嚼

 

「のり子、またそんな飲み込んで、、よく噛んで食べなさい!」

「ごめんなさい、、、」


私は食事を摂るのが苦手だ。
一度も楽しいと思ったことはないし、おいしいと思ったこともない。
口うるさいお母さんに食べ方を毎回指図されながら食べるのは肩身が狭く息苦しい。

幸い、学校では友達がいないから1分足らずでトイレで弁当を口から胃へ流し込む事が出来る。

でも夕飯は自宅だからそれが出来ない。


「のり子!唐揚げ飲み込む馬鹿がどこにいるのよ?!最低30回ずつ噛むまで今日は許しませんからね。
お母さんは洗い物してくるからちゃんとよく噛んで食べてるのよ。」


「…………」


30回も噛んだ唐揚げは、ドロドロとして、クラクラして、油が口内に膜を張って、まるで人をーーー•••

 

 

 

 

バキッバキッバキッバキッがリッガリッがリッガリッ

 


「のり子?」


バキッバキッバキッバキッゴキッグギギっ


「ギャアアアアアアア!!!
のり子、のり子、、あ、あなた歯が、歯が、、」


私はよく噛みすぎて自分の歯と歯茎を噛み砕いていた。


よく噛めば噛むほど味わえる血肉の味。
私は三年前に咀嚼しつくしたお父さんのことを思い出していた。
あれ以来普通の食事が出来なくなってた。
何を食べても甘い、辛いとかの味しかしない。
固い、柔らかいとかの食感しかしない。
ずっと、退屈で、寂しくて、虚しかった。

 

「最低、30回ずつ、噛むから、お母さん、
もう怒らないで、、」


私はお母さんの膣に頭部を突っ込み里帰りを果たした。
そして中から順に食い荒らした。
もちろん30回ずつ咀嚼して。

 

 

【小説】踊り食い


仲睦まじい私達。
毎晩燃えるような恋をする。

 

初めての夜。

どこに出してほしい?

中に出して。


次の日

どこに出してほしい?

中に出して。


次の日

どこに出してほしい?

中に出して


次の日

どこに出してほしい?

中に出して


九ヶ月と二週間

どこに出してほしい?

出たよ。


ゴトン。
白濁液胎盤にまみれた赤子。


私はドレスを纏い、ヒールを履く。
赤子の上で激しい激しいフラメンコを踊る。

貴方は目を細めながらそれを見つめ、サーモンのマリネを食べる。

 

次の日

どこに出してほしい?

中に出して。

 

[小説】一汁散在

私は小さい頃に手術を受けた。
けれどうちは貧乏で病院に行けなかった。
だからママとパパが医療ドラマの見様見真似でメスを握った。
そして私は死んだ。

いや、正確には生まれ変わった。
私は少し特別な体を手に入れたんだ。
そしてそれを利用してママとパパと私で商売を始めた。
今では生活に不自由なく暮らしているわ。

マンションの一室でそれは行われている。
まずお客様が来て受付を済ませる。
そして好みの器具、刃物、鈍器を選び、それによって支払い額が変わる。
先払いを済ませたら、あとは私の居る奥の部屋に通される。

そして私は死んだ。

お客様は私の膣の収縮が弱くなる前に狂い犯し、千切れた首から血を吸い、悶え、射精する。

そして事を終えるとシャワーを浴び、満足気に帰って行く。

そして私は目覚める。

そう、ここはネクロフィリア専門の風俗店。風俗嬢は私一人。
私はママとパパから受けた手術で、死んでも膣内に射精されるとそれが薬となり、養分となり生き返る。
精子のタンパク質のおかげかしら?殴られ刺され切断されても数分で元の綺麗な身体になるの。
マニアでも知らないお店だけれど、お客様は絶えないわ。

ママとパパが私にどんな手術をしたかは知らない。
ただ、三人で幸せに暮らしたかっただけなんだと思う。
私も毎日三食あったかいご飯が食べれて、ふかふかのベッドで眠れる日々に感謝している。
この生活を手放したくない。絶対に。そう。絶対に。

今日もそして私は死んだ。

今日のお客様は私の腹を切り裂き、子宮を潰した。
そしていつものように射せ、、、否。
私はお客様を殺した。何度も何度も心臓を刺した。まるで何かが壊れたかのように。
それから私は私を食べた。
私の子宮を奥歯ですり潰し、臭い息を吐きながら。


バタン!

ただならぬ空気を感じたのかママとパパが勢いよく扉を開けた。

ああ!なんてことを、、私は、私は、、


「ママ、パパ、ごめんなさい、、早く精子を、、早く精子を私に、、」


遠のく意識の中。
私を肴に涎を垂らしながら狂人の如く腰を振るママとパパを見た。


そして私は死んだ。