独裁心中

せとらえとの子宮。掃溜の思考と考察、ホラーショートショートを綴る。

ショート

思考を止める事が出来ないぐらい沢山の事を考える。

手の動きはいくらでも止まるのだけど。


今日の事、明日の事、昨日の事、まだ起きてもいない事。
考えなくて良い事を考えて、考えるなよという事を考える。

お酒を飲んでいると思考能力も知能指数も著しく下がるので考えなくて良いし楽だが、もう飲むお酒が無くなって飲む事を終えると思い出したかのように余計な事を考え出す。

でも偏差値4ぐらいになっているので考えたところで何も考えられていない。

 

 

自分を励ますというより自分に同情するかの如く、成るように成った結果が今ならいいじゃないか、と言ってみても1ミリもそんな事思ってないから自分を殴りたくもなる。
むしろ殴ってくれと思う。
でも殴られると殴り返してしまうのでもう駄目だ。

自分は一人で壁に頭を打ち付けているのが似合うと思う。

セルフDVだ。

せめてそれぐらいは絵になる駄目な大人でいたいけど、それが許される歳でも無い事は分かっている。

 

考えても考えても、結局考えるだけで終わってしまうなら、


今は考えるより兎に角動けと、自分に鞭を打つセルフDVにシフトチェンジしていきたい。

 

 

Adolf

 

 

神様はヒトラーだから弱い人を容赦なく殺す。
ほら今日も通り魔に刺されて妊婦が死んだ。


「弱い人は嫌いです」忘れられない貴方の言葉。
ほら今日もいつかの他愛ないが心に刺さる。

 

あの日全てを見た気がした。

全てを見て途方に暮れた。

溜息とか涙とかそんなものはもう遠に亡くしていた。

 

罪があるとか夢があるとか、素敵な物を背負ってるね。

そんなものを償いながら追いかけながら生きているだけ。
毎日毎日死ぬ為だけに生きているだけ。

 

 

死んだら楽になれるだなんて、死んだ事もない人が歌ってる。
ほら安い涙を流して信者が聴いて。


「死ぬ気になれば何でもできる」

死ぬ気になったら死んでしまったよ。

ほら今日も自分の醜さを隠して生きる。

 

あの日全てを知った気がした。

全てを知ったつもりで静かに笑ってた。

私も貴方もすれ違う人もみんな同じなんだろうね。

 

月が欠けるとか花が咲くとか、自然な不自然抱えてる。

そんな話をしながら、失いながら微笑みながら生きているだけ。

毎日毎日過去の清算する為に生きているだけ。

毎日毎日死ぬ為だけに生きているだけ。

 

 

あの頃から夜がずっと開いたままで。

悪夢を見続けている。

 

 

 

 

【小説】ノボリボウ

「お空に昇ろう」

そう言って俺はこの妊婦のへその緒を抜いてから食べた。
いろんな意味で食べた。
「あゝ不味い早よ死ね不味い早よ死ね不味い早よ死ね...」
いろんな意味で妊婦はイッた。


俺は食べ終わると今日もまた進化し、空へと昇る準備が整っていくのだ。
そう、俺は空に昇りたい。
だから日々妊婦のへその緒を抜いて食べてイかせる。

そんな事をして空に昇れるのかって?
出来るさ、俺には計画があるのだ。

まず俺はヒトでは無いからお前らが出来ない事が出来る。
お前らが出来ない発想も出来る。
エジソンピカソも俺が殺した。
そして俺は妊婦と中の子も食うから日々栄養満点でパワフル。
頭も回転速度を増していくばかりだ。

ところで、抜いたへその緒を何に使うかって?
俺はへその緒を繋げてノボリボウを作っている。
空に昇るために。
どうだ?お前らにこんな事が思いつくか?へその緒で空に昇れるか?
無理だな。所詮お前らはヒトだもんな。臭え奴ばかりだ。
無力で、一人じゃ何も出来ず、一人じゃ寂しくて死んじゃうような底辺だもんな。
それに比べて俺は一人で!空に昇れる手段を!手に入れて!現実になる!なる!な


れたらいいな、よかったな。


俺は唐突に酷く肥えた身体を自身で抱き締めた狂ったように泣き喚いた。
その後、集めた1313本のへその緒を抱き締めた。
「お母さん、お母さん...うう...」

俺も本当は所詮はただのヒトなのは分かっていた。
その現実を最後まで見て見ぬ振りをする事は出来なかった。知っていた。
結局俺も無力で、一人じゃ何も出来ず、一人じゃ寂しくて死んじゃうような底辺だと。

ただ誰かの特別でありたかった。
お母さんに愛されたかった。
お母さんに会いたかった。
お母さんから生まれたかった。

 

 

中絶ピアノ

ピアニストになるはずだった。

勉強で上位を取り続けたのもその為。

行きたい大学のピアノ科の為。

あの時死ねば良かった。

むしろ歳を重ねるごとに水子が将来の夢だった。

それも叶わないね。

 

病気になり幼い頃から親と約束した目指したピアノ科も受験すら出来ず入退院繰り返して廃人になった私を優しく罵倒して否定して笑ってくれよ

 

10年以上ブランクをあけ去年再開したピアノ。

今は手元に66鍵しかなく人生を変えてくれた得意だと思ってるショパンも必死に食らいついた大好きなリストも弾けない。

88鍵は訳ありでまだ引き払ってない埼玉のアパートにぽつりと。音を鳴らす人もいないまま。

関西の実家にはアップライトピアノが二台。

物理的に弾けもしない距離のピアノ。

母親がまともに弾けなかったおさがりのアップライトピアノ

高校時代自分が初めて自力で買った真っ赤な電子のアップライトピアノ

前者だけは売るくらいなら焼き殺して。

 

もう一生ピアノコンクールに出れる事もない。

そんな事ないよ、年齢なんて関係ないよ、とか余計な声をかけないでくれ。

行きたい大学行けなくて悔しすぎてヤケクソで軽率に入った音楽の専門学校なんか3日でやめたわ死ね。

 

でも今ピアノ弾きながら歌うの楽しいし楽しい。

バンド一緒に組もうとしてくれてる子も楽しいし楽しいし愛しかないよ。

 

散文?戯言?いや、負け犬以下だね。

とくにまとめも言いたいこともないけど、自分と過去の保護者で決めた寿命の30歳まであと5年もとっくにねえけど、しわくちゃでしみまみれで腰ひん曲がった老後にショパン小さな一戸建てで一人弾けてたら自分を初めて美しいと思えるよ。

 

 

 

 

【小説】清く濁流

 

私の家は散らかっている。
ゴミ屋敷、なんて近所で噂されているらしい。
10年前家族が焼け死んでから寂しくて、寂しくて、虚しくて、物を集める癖がついてしまったようだ。
初めは粗大ゴミだった。
修理すれば実用性がありそうだったからだ。
でも、気づけば今は浮浪者の飲み捨てたワンカップの空き瓶、カラスの荒らしたゴミ袋の中身なんてのも持ち帰ってしまう。
使うんだ、使うんだ、なんて言って自分に言い訳して結局使ったことはない。

そういえば私は家族がなぜ焼け死んだかを覚えていない。
きっと父親の寝タバコなんだろう、となんとなく理解している。
父親は自営業で仕事が大変で凄くヘビースモーカーだった。
ストレスが凄まじいらしく、いつも帰宅するとイライラしていた。
母親はというと、ただの専業主婦。
ただのとは言っても家事を完璧にこなすものだから料理はいつも美味しいし、掃除なんて感嘆符が付いてしまうくらい家はピカピカで無駄な物も塵ひとつなかった。
私はまあ普通より少しいい暮らしが出来ていたほうだろう。
衣食住もそれなりだった。
今思うと有難い話だった。

 


雨上がり。今夜もゴミを集めに深夜徘徊をしていた。
オンボロな乗れそうにもない自転車と食べかけのコンビニ弁当と錆びたペンチと雨でしなびたマッチ。
今日はこのへんにしとくか、とゴミをまとめていたらふと頭の中で声がした。

「断捨離はね、部屋だけでなく身も心も綺麗になれるのよ」

なんだ?断捨離?私とは無縁じゃないか。
なにが断捨離だ。私の気持ちなんて何も分からないだろ。
私はしなびたマッチを踏みにじった。


ーーーあ。


母親の口癖。


私は全てを思い出した。
あの日私は家族を断捨離したんだ。

そして私の心は断たれ、捨てられ、世界から離脱したんだ。

 

【小説】果ての乞食

私は上手く食事が出来ない。
いつからだろう。気がつけば普通の食事を摂ると自然に嘔吐するようになった。
自分が食べれる物を探して片っ端から試したが駄目だった。
水さえも生臭くて、呑み込んでは吐き出す事を繰り返していた。
みるみる身体は痩せ細り、立つこともままならなくなった。
何か食べなくては、何か食べなくては。
だけれどコンビニに行く体力も既に失われていた。

人は長らく飢餓状態が続くと意識が朦朧としてくる。
そして思考回路に異常をきたす。
そして私はきたした。

ーーーまだ口にしていないモノがあったわ。

私は包丁で腕を切る。
水分もまともに摂取していないため、ドロみのついた血液が垂れる。
着ているパステルカラーのワンピースが赤黒く滲む。
乾いた舌でそれをすくってみた。
今まで食べた事の無い味、分からないけれど赤血球たちの味がした気がした。
不思議と嘔吐反応も訪れず、私は歓喜した。

ーーーこれで私も食事が摂れる。

だけど血を飲むだけでは食べた気がしない。
私は氷皿に自分の血を流し込み凍らせ、バリバリと食べるようになった。
冷凍庫の中は次第に狂ったにおいになっていった。

それでも所詮は私も人間。
血液だけでは生命を維持出来ない仕組みに出来ている。
今思うと何故ここまで生きる事に固執していたのか分からない。
やはり人間という愚かな生き物故の本能が私をそうさせたのだろう。

私は自分の左足の指を切り落としてみた。
歩けなくなっても買い出しに行く事もないし、必要ないと思ったからだ。
もう記憶にはないけど多分痛かったとは思う。
まずは一番小さい小指から咀嚼してみた。
爪が歯に挟まって食べづらい。
でも指先の肉はフランスパンのように固く、もっちりとした食感だった。
私は調味料さえ受け付けないからそのまま食べたけれど、普通の人ならガーリックバターなんて塗れば美味しく食べれると思う。
それにしてもやはり私の許可食の血が含まれるだけあって、肉も嘔吐反応が起こらなかった。
久々に固形物を口に出来たことと、その舌に残る程濃厚な甘さに私はハイエナのように貪った。

 

どれくらいの時間が経ったのだろう。
私は自分の睾丸を嚙み千切り、口に含んだ状態で遺体として発見され‭た。

 

 

【小説】恋は盲目

 

あれだけ好きだと伝えたのに。

感情も殺して舌も噛み切ったのに。

どんなに嫌なことも我慢したのに。

あんなことされても濡らしたのに。

味わったことない程不味い精液も飲んであげたのに。

応答セヨ。信号ナシ。

中に出セヨ。精液ナシ。

あれ?私はどうやらサメになったみたい。

とうとう貴方に冷めた。

ようやく目が覚めた。

でも好きじゃないこと認めたくなくってね。
ほら、私我慢強いから。

貴方の頭、電子レンジでチンしてみたけれど、マイクロ波で爆発してぐちゃぐちゃに脳味噌が飛び出ただけで冷たいまま。

今度はフライパンで揚げ焼きにしてみたけれど、油が跳ねてアタシの腕が火傷しただけでジュージュージューシー芳しい香りがするだけで冷たいまま。

 

やめた。

飽きた。

諦めた。

冷凍庫にぶち込んだ。

いっそ凍ってしまえば?

やっぱり私、冷めたし覚めたみたい。

 


一週間後。

冷凍庫を開けてみると、貴方は溶けてなくなってた。

ところが溶解物は熱く、39度8分。


何故。

冷たい涙が出た。


私は静かに火をつけた。


不器用な私達は精一杯の恋心を込めて業火に包まれよう。